イマドキの子は「だるまさんが転んだ」ができない

体幹の強さや関節の柔軟性は、昔なら木登りをしたり、校庭の遊具で遊んだりする中で身につけることができた。子どもたちがハードルを跳ぶのにも大きな苦労を味わうのは、幼少期に外遊びを奪われた影響なのだろうか。バーが高い位置に設定されたハードルは、授業では使えない。生徒がバーに足を引っかけると、うまく受け身が取れずに、危険な形で転倒してしまうからだ。バーが真ん中から2つに割れるハードルでなければ、授業に不安を感じるという。
■「だるまさんが転んだ」ができない

ある動作の途中で、別の急な動作ができないのも、近年の生徒に多くみられる傾向だと長正氏は危惧する。例えば、走っている途中で急に止まることができない。昔の遊びでいえば「だるまさんが転んだ」と鬼役が振り向いたときに、急停止ができず、踏ん張れずに転んでしまうそうだ。

「なんで? と思うことが、当たり前のように起こっている」のがいまの中学校体育の現場だという。表現は適切でないかもしれないが、「運動音痴」といえなくもない。このような兆候は、震災の少し前からあり、長正氏の実感では「2015年あたりから顕著になっている」という。

■生活習慣の変化で子どもたちが肥満傾向に

子どもたちのスポーツ・運動、外遊びを取り巻く環境の変化は、体形の変化となって表れてもいる。文部科学省が行っている学校保健統計調査の中で、標準体重より20%以上重い肥満傾向児の割合について、「みんゆうNet」2016年3月2日付の記事がこう報じている。福島県の子どもたちは、2010年度は全国ワーストの年代が15歳のみだったのが、震災から約1年後の12年度調査では7つの年代が1位となり、13、14年度も6つの年代で1位だったとしている。

肥満傾向児の増加は、生活習慣の変化が大きく影響していることは論をまたない。特に大きいのは、外での運動や遊びが制限されたことに加えて食生活の変化だとする指摘がある。学校給食での地場産物の活用割合をみると、震災前は36.1%あったのが、2012年度は18.3%に半減した(「ふくしまっ子児童期運動指針」による)。

これも原発事故の風評の影響である。食材の選定の幅が狭まったため、子どもたちの食生活のバランスが崩れ、体力の低下や肥満傾向児の増加につながったと同県の教育関係者は分析している。

■「コロナで外出自粛」が肥満傾向児を増やした

2021年7月下旬、福島民友新聞に「10、13歳肥満顕著文科省、保健統計全国ワースト1位」という見出しとともに、頭の痛い記事が掲載された。文部科学省が公表した2020年度の学校保健統計調査結果で、福島県における肥満傾向にある子どもの割合が、5歳~17歳の全年齢で全国平均を上回ったという。

記事によれば、肥満傾向児の割合は5歳、16歳、17歳を除き前年度から悪化し、10歳の16.81%、13歳の15.51%はいずれも全国1位だった。13歳は2年連続の1位だという。ほかの年代でも、6歳(全国6位)、9歳(同7位)、11歳(同6位)、12歳(同7位)、15歳(同3位)、16歳(同5位)と、6つの年代で肥満傾向が色濃い。

県教委は「新型コロナウイルス禍による外出自粛の影響とみられ、(肥満傾向児の増加は)全国的な傾向ではないか」としている。

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しかし、これはそもそも授業という限られた時間内における運動適応の問題であって、要求される運動を日常的に遂行しているか否かで該当意見を根底から覆すことが可能となる。該当する子供にそれぞれ適切な運動学習を学ばせると、結果は変わるわけだ。

「だるまさんが転んだ」と鬼役が振り向いたときに、急停止ができず、踏ん張れずに転んでしまうそうだが、さあ貴方が今、このシステム・ルールを知らずに見様見真似でやったらどうだろうか。全速力で走ってしまい急停止しようとしたら足がついてこないはずである。

そう、急停止する必要があると心構えを作った上で走るとうまく遂行できるであろう。ゆえに、運動学習が不足しているとの帰結が当然得られることは想像に難くない。

そう考えると、本ニュース記事の要旨は食生活に関する言及であることが推測可能となる。さあ、肥満傾向児よ、上を向いて歩こう。君は悪くない。運動学習をしたまえ。結果は変わる。

肥満だろうがヤセだろうが、生きて良い。

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